未来は、つくる人の手にある
Qasar Younis が語る、リスクと機会、そしてエンジニアリングの次なる時代

「地殻変動が起きている場所を見極め、その断層線に立て。そこにこそ、最も大きな機会がある」
これは先週末、Applied Intuition CEO の Qasar Younis がケタリング大学の 2026 年卒業生に向けたスピーチで伝えた、核となるメッセージの一つです。
20 年以上前に工学の学位を取得した母校、ケタリング大学に戻った Qasar Younis は、式典で名誉工学博士号を授与され、自身の人生の軌跡を大きく変えた決断の数々を振り返りました。その中には、ミシガンを離れてシリコンバレーへ向かったこと、インターネットが台頭するなかで技術の変化を受け入れたこと、そして世界有数のフィジカル AI 企業の一社を築き上げる一翼を担ってきたことがあります。彼のキャリアは、不確実な状況から遠ざかるのではなく、むしろそこへ踏み出す姿勢によって形づくられてきました。
この助言は、AI が台頭するなかで社会に出る卒業生にとって、特に示唆に富むものでした。技術そのものは異なるものの、こうした変化に直面した際の感覚には、彼自身も覚えがありました。2004 年にケタリング大学を卒業した当時も、インターネットの台頭が、仕事の未来をめぐる同じような希望や不安、そして問いを生んでいたからです。
「だからこそ、私は皆さんと同じなのです」と、Younis は集まった卒業生に語りかけました。
「皆さんが今日それに気づいているかどうかにかかわらず、皆さんも私と同じなのです」
Younis の祝辞から、さらに 5 つのメッセージを紹介します。
Younis は、自身の人生における重要な決断の多くを、卒業して間もない時期に下したと振り返ります。それは、9.11 後に広がった不確実性と、インターネット黎明期の大きな技術変革が重なる時代でした。そうした不確実性こそが、変化の激しい時代を、卒業生にとって機会を見いだす絶好のタイミングにするといいます。
「皆さんが今ほど失うものが少ない時期は、これから先、二度とありません。だからこそ、今ほど得られるものが大きい時期も、二度とないのです」と、Younis は述べました。
ケタリング大学を卒業した頃、インターネットは、デトロイトで育った Younis にとって身近だった自動車産業を含め、経済のあらゆる領域をのみ込んでいくようでした。
「けれど私は、その変化の渦から逃げるのではなく、むしろそこへ向かって走ったのです。キャリアに安全な港を求めてはいけません」と Younis は続けました。
Younis が育った中西部を離れ、カリフォルニアへ移ったのは、今後数年で飛躍を遂げようとしている人々や企業に囲まれた環境に身を置く必要があると分かっていたからです。
「人生をかけたい業界の中心へ身を置きなさい。たとえ、そのために生活の基盤を大きく変えることになってもです」と、Younis は卒業生に呼びかけました。
「ある業界で成功したいなら、その周辺にとどまってはいけない。その分野で最も優れた人たちと共に働き、彼らから学ぶ必要がある」
最も避けるべきなのは、楽そうに見えるからといって、誰かの後を追うことだと、Younis は言います。
Younis は、若い頃、成功の秘訣を解き明かす知恵を求めて、自伝をむさぼるように読んだと振り返ります。けれど、やがて気づいたのは、成功のあり方は人それぞれ違うということでした。
「これまで皆さんは、明確に定められたレーンの中を泳いできました。けれど今日からは、大人の世界という広大な海へと放り出されます。そして大人の世界に、明確な輪郭はありません」
移民の家庭で育った Younis は、他人に頼ることに慎重でした。そうした気質は、起業家としての彼にとって大きな強みとなったのです。
「同級生たちが起業することをリスクと捉えていた一方で、私にとっては一つの会社にとどまり続けることこそがリスクでした。同級生たちが未知の土地をリスクと捉えていた一方で、私にとっては故郷にとどまることこそがリスクだったのです」
しかし、大人の世界という広大な海の中で、自分が進むべき方向を見定め、自分自身を知ることは、いつも容易とは限りません。
「他者から課された期待に従うだけでは、自分の道を見つけることはできません。ましてや、他人の足跡をたどって自分の人生を歩むことはできません」
スピーチの中でも特に個人的な思いが表れたのは、Younis が既存の制度や権力の集中に対して、長年抱いてきた懐疑について語った場面です。
ケタリング大学の学生時代、Younis は経済の大きな変化が、周囲の地域社会を変えていく様子を目にしました。その経験から、既存の仕組みや権力を持つ側が、常に正しい答えを持っているとは限らないという、健全な懐疑心を抱くようになったといいます。
その懐疑心を大切にするよう、Younis は卒業生に促しました。
「AI の開発や利用のあり方に不満があるなら、それを変えるのは皆さん自身です」
「社会がこの技術によってどう変わり、適応していくかを決めるうえで、皆さんには果たすべき役割があります。私たちを搾取し、データを盗み、関心を奪い、自ら意思決定する力を奪う企業を目にしたなら、そこで働いてはいけません。それに代わるものを自ら築くのです」
ステージを去る前に、Younis は会場に集まった卒業生たちに、バトンを託すと語りました。それをどう生かすかは、今や卒業生たち自身に委ねられています。
Younis は、「今この瞬間こそ、皆さんが何をし、どこでその仕事をするかを最も自由に選択できる時です」と述べ、「皆さんは、これまで受けてきた教育を土台に、自らの運命はもちろん、技術革新の中で自分がどのような役割を果たすかを自ら決定できる十分な準備を整えています」と語りました。
続いて、「歴史を振り返れば、文明の方向性を決めてきたのは常に何かを作り続けてきた人々でした。そして今日、私たちの文明を築き上げているのは、まさにエンジニアたちです。皆さんは機械を作る人々です。そして、皆さんが作る機械こそが、これからの私たちの文明を形作るものとなるでしょう」と強調しました。