米海軍の Data Engine:海洋自律化に向けたインフラの構築
Applied Intuition の「Data Engine」は、米海軍の既存艦艇に搭載されたパッシブ航法機能を通じて訓練データを収集することで、自律機能の開発を加速させます。
米海軍が自律システムや AI 搭載システムの実運用を進めるうえで、大きな課題となっているのが、システムの学習・試験・検証に必要な、高品質で実際の作戦環境を反映したデータの生成です。民間の自動運転車では、ジオフェンシングによって走行エリアを制限し、数百万マイルに及ぶ走行データを収集することができます。一方、軍事システムは、再現が難しく、刻々と変化する作戦環境に対応する必要があるため、実際の運用を想定したデータの収集と活用が大きな課題となっています。
Applied Intuition の自社ソリューション「Data Engine」は、まさにこうした課題を解決するために開発されました。「Data Engine」は、実運用データの収集・整理から、認識モデルの学習までを支える基盤インフラです。学習したモデルは評価を経て、OTA (無線通信) を通じて各艦艇に配信・展開されます。これにより、1隻の艦艇が得た知見を、艦隊全体で共有できるようになります。例えば、ある艦艇が新たな脅威に遭遇した場合、そのデータを活用して認識モデルを改善し、OTA 経由で艦隊全体に展開することで、すべての艦艇が同じ脅威を検知できるようになります。Applied Intuition はこのたび、米海軍の艦隊全体に「Data Engine」を展開するための契約を獲得しました。

データ収集:船上のセンサーが、船舶やドローンが遭遇した事象を受動的に検知・記録します。
データ キュレーション:最も有用な映像クリップが自動的に選定され、衛星を介して陸上に送信されます。
迅速な再学習:陸上でモデルが改良され、その後、船舶へ無線で更新が配信されます。
将来の紛争では、敵対勢力を上回る速さと精度で自律システムを実戦配備できる国が優位に立つと考えられます。そのためには、作戦現場から継続的にデータを収集し、そのデータを活用してモデルを学習・改善するとともに、改良された機能を再び現場に展開できるインフラが不可欠です。さらに、急速に変化する脅威に対応できるよう、こうしたサイクルを迅速に回し続ける必要があります。
海軍は何十年にもわたり、艦艇やセンサー、さまざまな作戦を通じて膨大なデータを収集してきました。しかし、データを体系的に記録・集約するためのインフラが十分に整備されておらず、場当たり的な方法に頼らざるを得ない状況が続いてきました。現在も、個々のプログラムがそれぞれ異なる目的でデータを収集しており、記録の基準やデータの保存環境も統一されていません。
海上という環境も、データの収集と活用を難しくする要因の一つです。海軍の艦艇は、接続が不安定で途切れがちな衛星通信のもとで運用されるうえ、作戦中は電磁波の放射を最小限に抑える必要があります。そのため、乗組員は限られた通信帯域をどの映像データに割り当てるべきか、常に判断を迫られます。例えば、何時間も変化のない海面を映した映像よりも、他の艦艇の活動を捉えた映像のほうが、作戦上有用な場合があります。
また、展開中に衛星通信で送信できなかったデータは、艦艇が帰港した後に手作業で回収しなければなりません。この作業には数カ月かかることもあり、せっかく収集したデータがモデルの学習に活用されず、保管されたままになったり、破棄されたりするケースも少なくありません。
その結果、実際の作戦環境で収集された膨大なセンサーデータが、新たな自律機能の開発や性能向上に十分に活用されていないのが現状です。
たとえ高品質なデータがあっても、作戦環境が変化し、任務の要件が変わり、敵が新たな対抗策を講じるにつれて、認識モデルの有効性は導入した時点から徐々に低下していきます。
ある艦艇がすでに遭遇した脅威を、別の艦艇が検知できないこともあります。一隻の艦艇が得た知見が、艦隊全体で共有されていないためです。変化の激しい作戦環境に迅速に対応するには、新たな機能や改良されたモデルを、必要なタイミングで艦隊全体に展開できるインフラが不可欠です。
Applied Intuition の共同創業者兼 CTO であるPeter Ludwig は、次のように述べています。
「自律システムの成否は、学習データにかかっています。米海軍は深刻なデータ不足に直面しており、Data Engine はまさにこの課題を解決するためのインフラです。これは、地上での自律走行を実現してきた継続的な学習のアプローチを、はるかに高いリスクが伴う環境に適用するものです。実運用への展開を重ねるたびに、その経験が次世代のシステムの改善につながります」
Applied Intuition の「Data Engine」は、実際の作戦データの収集・活用から、高度な認識技術や自律機能の開発・展開までを一貫して支えるフレームワークです。
「Data Engine 」は、艦艇に搭載された認識システム、拡張性の高いデータ収集ソリューション、陸上のインフラを統合し、海上作戦全体で AI・機械学習 (ML) モデルの継続的な改善を可能にします。これにより、さまざまな作戦データを収集し、陸上で一元的に処理・分析してモデルを開発したうえで、改良された機能を再び艦艇などの作戦プラットフォームに展開できます。
この統合的なアプローチにより、実際の作戦経験を次の学習や性能改善につなげる継続的なサイクルが生まれます。こうして海上領域におけるAI技術の進化を促し、より高性能な自律システムの実現を支えます。
Applied Intuition は、将来的に各軍種がそれぞれの作戦領域に適した独自の「Data Engine」を運用しながら、共通のインフラを通じて相互に連携できる環境の実現を目指しています。
詳細については、Applied Intuition Defense をご覧ください。